「30にして立つ」若手社員はどうすれば育つか?
2009.08.20
第1回 「30にして立つ」私のキャリアストーリー
佐々木郷美
エム・アイ・アソシエイツ(株) マネジャー
このコラムの中では「キャリアとは、仕事や周りの人とのかかわりを通して自らを成長させるプロセスのこと」と定義します。単なる出世や年収アップ、有利な転職がゴールではなく、多様な仕事の経験からどれだけ多くのことを学べるか、がキャリアの勝負です。失敗や挫折の経験の中から、時に自らの考え方や能力の限界に気付かされることもあるでしょう。その限界を超え、自分の幅を広げていく過程こそが立派なキャリアなのであって、そこには他の人とのかかわりを欠かすことはできません。第1回目は、自己紹介を兼ねて、私自身の20代のキャリアの話をさせていただきたいと思います。
私自身、最初の会社で秘書としてキャリアをスタートした時に、決して自分の成長に最適な環境ではありませんでした。会社も小さかったので仕事を教えてくれる先輩はおらず、上司は留守が多く、仕事をサボっては、社内の噂話、陰口、愚痴に熱心な人が周りにはたくさんいました。
そこで、新米だった私はどうしたか?先輩方が嫌がる仕事をなるべく進んで引き受けるようにしました。また、自分から社内を動き回って、他部署の先輩と接点を持ち、視野を広げるよう努力しました。「この商品はよく売れているのですか?なぜですか?」「お客さんからよくあるクレームは何ですか?」。現場の第一線の声を聞くと自社のビジネスへの興味も高まり、ときには「会社を将来こんなふうにしたい」といった野望やビジョンを語ってくれる先輩にも出会い、「自分も成長してこの会社に貢献したい」という決意が芽生えてきたのを覚えています。
ポジティブな手本は自分で見つけねばなりません。周りに流されてしまうのは簡単です。会社の悪いところに目を向けるのも簡単です。でも、自分自身が前向きであり、主体的に動く人間でありさえすれば、道は開けてくるものです。理想の職場など存在しませんが、「こう変えたい」という前向きなエネルギーを持っていれば、極端な話、自分がロールモデルになってしまうことだって可能なのですから。
確かに、叱られるのは気持ち良いことではありません。偉い人に叱られると、さらに落ち込みます。私が一番こたえたのは、入社3年目のとき、上司の上司、当時の役員に呼び出されて叱られたときのことでした。そのとき、直属の上司は留守でした。
私の失態を耳にしたその役員は「君の行動が、どれだけ会社と相手を困らせているか分かっているのか」と皆の前で、大声で叱りました。偉い人なので普段しゃべったこともありませんし、何しろ怖くて、しどろもどろになりました。その経験を通して、私は自分の甘さや未熟さを痛感し、意識がパッと切り替わったのを覚えています。今はその上司に大変感謝しています。
20代で行う仕事は、思い込みと失敗の繰り返しです。自分では一生懸命のつもりが、たいていどこかピントがずれていることが多いのです。それを指摘してもらえるのは20代の特権。素直に受け止めて、考え方や行動を変える努力をすることです。30代になると周りは言ってくれなくなります。自分で感じ取らねばならなくなります。20代のうちに叱られた経験が不十分だと、周りの要望を感じ取る力は弱くなり、自分の成長も鈍化してしまいます。
私は28歳で転職し、10人に満たない小さなブティック・コンサルティング会社に入社しました。小さい会社なので教育担当がいるはずもなく、皆忙しい人ばかりでしたから、見よう見まねで仕事をがむしゃらに覚えるしかありませんでした。初のプレゼンテーションではまともな説明さえままならず、顔から火が出る思いもしました。
ところが入社3カ月後のある日、上司とあるお客様を訪問したとき、言われたのです。「あっという間に成長しちゃってびっくりしたよ。こちらが勉強になったよ。」褒められて嬉しいものの、自分ではあまり実感がありません。だって本人は必死でしたから。苦手意識があったプレゼンテーションも、褒められながら少しずつこなせるようになり、いつの間にか研修の講師の仕事が中心になっていくようになりました。無茶とも思える仕事にチャレンジさせてくれ、良いところを引き出し、成長させてくれたこの上司にも、とっても感謝しています。
20代のうちは、自分は何に向いているのか、何を目指せば良いのか、方向が見えなくて焦ることもあると思います。私自身もそうでした。でも、一生懸命取り組んでいれば、周囲の人が自分の強みは見つけてくれます。自己発見や自己理解は、自分だけでは絶対完結できません。周りからのフィードバックを素直に聴けるアンテナを立てることが大事だと思います。
かく言う私自身も転職をしています。20代で2社経験し、今の会社は3社目です。ただし、辞める直前までその会社に思い入れを持って、どこでも100%自分を出し切ってきたという自負があります。2社目の会社への転職時、私の最初の挨拶を聞いて、当時の同僚が後でこんなことを言ってくれました。「あなたの挨拶を聞いて、会社に爽やかな風が吹いた気がしたよ。この風に乗っかれば、自分も前向きに変われるかも、と思った」。とても嬉しかった一言として記憶しています。
会社が持つ空気もお客様に与える印象も、社員一人ひとりが作っていて、自分も影響を与えうる、と実感した瞬間でした。そして、この会社に自分の存在意義を残す仕事をしたい、そういう気持ちになったのを覚えています。記録的な成果でなくても、会社の何かが変わった、ということでもいい。
20代の後半に「自分が会社を支えている」という思い入れで仕事ができた人は幸せだと思います。もちろん、長いキャリアで気が変わることもあるし、転職せざるを得ない事情が生じることもあるでしょう。でも、今の会社で輝けない人は、外に出ても輝けるはずがありません。
1996年奈良女子大学文学部卒業。『7つの習慣』で有名なフランクリン・コヴィー・ジャパンに入社。商品開発、マーケティングに携わる。その後、キャリパージャパンにて、人の「内的動機」を明らかにするアセスメントツールを使い、個人や組織の潜在力を引き出す採用、人材育成のコンサルティングを企業に提供する。2005年 「人」を活かす「組織」作りのサポートをテーマに、エム・アイ・アソシエイツ株式会社に参画。 1998年 英国ランカスター大学 マネジメントスクール卒業。 2008年 米国ケースウェスタンリザーブ大学 修士修得。ポジティブ心理学を応用した組織開発学(OD)専攻。











