植田寿乃の「女性リーダーが拓く会社の未来」
2009.09.17
第4回 女性活躍推進が進んでいる業界・会社、遅れている業界・会社
植田寿乃
キャリアコンサルタント/ダイバーシティコンサルタント
私の主宰する女性と組織の活性化研究会(http://newo.jp)には、90社から150人が登録をしています(2009年9月現在)。金融関連(銀行、損保)、製薬、コンピューター関連、各種メーカー、情報サービス、不動産、化粧品、スーパー、プラント関連、商社、航空・旅行、新聞社、大学、研究所など、多種多様な業種の企業、組織の人がメンバーとなっています。
特に昨年から今年にかけて、どんどん新しい会社が参加してくれるようになりました。また、参加している企業の多くは、オールドキャリアの体質を持つ大手・中小の日本の企業、また外資系であっても企業風土が、オールドキャリアの日本体質の色が強いところです。つまり、課題を抱えているからこそ研究会に参加しているわけです。
改めて研究会のメンバー業種を見ると、今の時点でこのテーマに取り組んでいない業界、業種はほとんどないのではと感じます。もちろん、早くから取り組んでいた業界もあれば、後発のチームもあります。私がダイバシティーの講演や研修を手伝っている企業は500人以上の規模の会社が多いのですが、女性が多い企業、男女比率が半々の企業、女性が極めて少ない企業と3つのグループに分かれます(下の図)。
私はある下着メーカーのショップの店長、リーダーに対してモチベーションリーダ研修を2002年から行っています。女性しかいない職場で、リーダーシップをもって頑張ってもらうための研修です。確かに、この企業は離職率も低く、女性にとって働き易い制度などは整っているようでした。
しかし、女性たちの本社における活躍度合を見る限り、女性活躍推進という意味では、1990年代に私が働いていた全日空の状況に良く似ていました。つまり、女性しかいない部署には女性の管理職はいるが、本社など男性女性が混在する場所では、女性管理職はほとんどおらず、女性はアシスタント的な役割の人が多いという状況です。
この状態に甘んじているのであれば、男子校に女子クラスを作った状況の勘違いダイバシティー状態と言えます。女性が多い企業で、女性のための制度を早くから作ってきた企業は、今さら女性活躍推進に取り組む必要はないと考えて、この状態で止まってしまっているところが結構多いのです。
そういう意味では、女性が多い中、早くから取り組み、しかもその取り組みがうまく進んでいる会社として、資生堂があげられるでしょう。7月の研究会で人事部ダイバーシティ推進グループ参事の宮原淳二さんが、「ワークライフバランス」を中心に発表してくれました。同社の女性社員は全体の8割に上りますが、その女性社員の管理職割合を現在の2割から3割に上げていくという目標を掲げています。さらに、女性活躍推進に端を発したダイバーシティーの取り組みが、女性に限らず男性にとっても、つまりすべての働く人たちにとって重要な取り組みとなり、社内で認知されている状況は理想的といえるでしょう。女性比率に関係なく、多くの企業が目指したいモデルといえます。
昨年、私は三井化学の人事・労務部 女性社員登用推進チームリーダーの田中千穂さんから、三井化学のすべての男性管理職向けのダイバシティーを意識するリーダーシップについての講演を依頼されました。女性活躍推進への取り組みも3年目とのこと、地道に取り組んでいることに驚きました。2カ月で、本社を含め全国7カ所の工場で合計10回、約1600人近い男性管理職に対して講演したのですが、特に地方の工場での女性活躍推進が進んでいるのに驚きました。かつて、男性でなければと考えられた職場は、オートメーション化、IT化の中で男女関係なく働くことが可能な職場になっており、危険物取扱といった資格を取得する女性もどんどん増えているなど、現場における女性の活躍が、どんどん進んでいることを目の当たりにしました。男性が多い職場での女性活躍推進への取り組みとして、先進的な例といえるのかもしれません。
不動産業界も男性が多く、女性比率が圧倒的に低い業界かもしれません。しかし、この業界にも異変が起こっているようです。私は今年2月に、三菱地所系列の不動産管理会社の男性管理職向けの講演を東京で2回、大阪で1回、担当しました。その企業は、これまでずっと男性ばかりの職場で、オールドキャリアの軍隊型組織により安定した企業成長を遂げてきました。ただし、女性比率はまだ非常に低いものの、ここ数年入社する新入社員の男女の割合が男女ほとんど変わらなくなってきています。このため、女性部下を初めて受け入れる男性管理職は戸惑っており、またその組織風土の影響で若手女性社員の退職が顕著な問題として現れてきたのです。 そこで危機感を感じた社長が人事部長と話し合い、組織風土を変えるべく男性管理職向けの講演を計画しました。女性部下を現在持っている職場の管理職、来年には女性部下を持つであろう職場の管理職、計200人が対象です。
そこで私は、実際に女性の部下のいる管理職の人は、女性部下と一緒に参加してもらえないかと提案しました。講演は、日経BP社でも数回行っている『女性活躍推進が拓く会社の未来 カギを握るのは男性上司!』でした。男性管理職の気づきとともに、一緒に参加した女性の部下の人たちのうなづきと笑顔と涙が印象的でした。
3回の講演を終えたとき、私と同じ年の人事部長は想像以上の手ごたえを感じたようです。自称コテコテのオールドキャリアの人事部長方が、本音ベースで女性活躍推進の重要性を気づき、真剣に取り組もうとしている姿を見て、私はとても嬉しくなりました。
3年前に女性と組織の活性化研究会が発足したとき、参加していた商社のダイバーシティー担当の女性が、総合職の女性は男性50人に対し1人の割合で、まるで動物園の珍獣のように見られ、プレッシャーとストレスでいっぱいだと訴えていましたが、その状況が今も続いているようです。また、一般職で採用した女性たちの職種転換や、モチベーションの維持、向上も課題になっているようです。
「女性活躍推進とか言ったって、どうなんですかね。ようやく最近、うちの会社も男並みに働ける女性が出てきたかなという感じですが、海外出張に女1人で行かせるのもね~。そもそも女性がバリバリ働きたいなんていうのが信じられないね。マスコミが言ってるだけなんじゃないんですか?私の親戚の娘は、4年生の大学を卒業しますが、一般職で数年勤めて早く結婚したいなんて言ってますからね。やっぱり、そのほうが女性も幸せなんじゃないかな。どうなんですかね、植田先生」
これは、女性活躍推進に関する取材の席での、ある商社の幹部の人の言葉です。私は目がテンになるというのは、こういうこと状態なのかなと思うほど驚き、がっかりしました。こういう人たちに目を覚ましてもらうことこそが、組織風土を変えていくために最も重要なのです。
1960年生まれ。筑波大学芸術専門学群卒。自動車会社の一般職から、(株)ベンチャーリンク、(株)アスキーなどを経て、1991年ANAビジネスクリエイト(株)にてIT事業を立ち上げ、マルチメディア事業部長。1998年IT業界の人材育成を目的に独立し有限会社キュー を設立。2000年より人材開発業界に転身。「モチベーション・リーダーシップ」「経営陣、管理職の人間力アップ」「女性と組織の活性化」「メンター育成」に取り組み、各種オリジナルカリキュラムを開発、年間200日を超える研修・講演を実施。年間1000人のビジネスパーソンへのキャリアコンサルティングも担当。2007年2月より 「女性と組織の活性化研究会」 を主宰し、現在70社を超える企業をネットワークしサポート。著書に『女性活躍推進実践アドバイス』『「女性を活かす」会社の法則』『キャリアセレブになる36の秘訣』「30歳からの幸せなキャリアの見つけ方」等。












