植田寿乃の「女性リーダーが拓く会社の未来」
2009.11.05
第7回 30代女性たちがキーパーソン!「バランス力」が重要!
植田寿乃
キャリアコンサルタント/ダイバーシティコンサルタント
20代は独身の人も多く、社会人となってまだヨチヨチ歩き状態といえるでしょう。また、40代、50代が社会的責任、家族の責任などを抱えつつ、人生の収穫をし、後進に経験を伝えていく世代です。実は、20代40代50代における男女の抱える人生の状態の差は、あまり大きくはありません。
しかし、30代は違います。女性にとって結婚、出産、育児は、男性とは比較できないほど大きな負荷になっています。子育てをしながら働く女性へのサポートは、どの企業もかなり進んでいます。しかしながら、企業の制度が万端なら、問題なく働けるかといえば、それは大きな間違いです。肉体的、精神的に女性が背負う負荷ははかりしれません。
私の著書「ワーキングガールの落とし穴33(2006年5月発売)」は、私が1999年~2002年にかけてSuperbNetという働く女性を応援するコミュニティを主宰していたときに執筆した連載コラムをまとめたものです。20代30代の働く女性たちがはまってまう落とし穴、私自身が半分落ちて、周りの女性たちが半分落ちているものをまとめました。仕事でバリバリのキャリアウーマンを目指すか、結婚・出産で専業主婦を目指すかという両極端の方向を指向するなかで、バランスがとれずに、いろいろはまってしまった落とし穴を33個、女性の厄年分書いてみました。下に示したのはその例です。
2009年の今も、働く20代30代の女性たちはまさに同じ状態にいるように感じます。企業研修や講演、公開セミナー、私は多くの女性たちと会っています。一生懸命生きているけど、悩んでいる、どうにかしたいけどモチベーションが上がらない、そして、誰もがそんな状況に甘んじて生きていたくないと思っています。
余談になりますが、この本は、昨年、中国語に翻訳されて台湾で出版されました。今年は韓国語にも訳されて、書店に並んでいます。アジア(中国、韓国)で働く女性たちも、まさに日本の女性と同じ悩みを抱えているようです。
ここで、話は2000年以前のオールドキャリアの時代に戻ります。私が1980年代、自動車会社の腰かけOLだった頃、私も含めて女性が会社に勤務するのは3年~5年くらい。結婚するか、私のように既婚者だったら妊娠するまで、ちょっと働くかなといった気持ちの女性たちがほとんどでした。私が与えられた仕事は、毎月の定例的な請求業務のアシスタントでした。30社くらいの取引先から届く、600枚ほどの伝票、それを電卓で計算して納品書や請求書を発行して一覧表に管理する仕事です。
初めて会社で働くということを体験した1年目、数々の失敗をしながらも、私は働くことが楽しくてしょうがありませんでした。2年目になると、自分の仕事に慣れてミスはほとんどなくなりました。そして、私は3年目、自分の仕事をこなすだけでは時間を持て余すようになりました。同期で入社をした男性は、いろいろな業務を任されていましたが、私は同じ仕事しかしていなかったからです。
私は直属の部長に言いました。「私も違う仕事をやってみたいです。今の仕事には慣れてミス無くできるようになりましたが、逆に時間が余ってしまいます」。それに対する部長の答えは「余裕があるならいいじゃないか。女の子は同じ仕事をやってくれていればいいのだよ。慣れてきたのなら安心して君に任せられるからね。それに君は結婚しているから、1~2年したら子供ができて辞めることになるだろう。新しいことをやっても慣れる前に辞めてしまっては困るからね」。腰かけOLだった私でさえ、モチベーションをいっそう下げられた言葉としても今も私の心の中に深く残っています。
つまり日本の会社には、女性は定例的な仕事、サポート的な仕事が向いていると考え、そういう仕事を任せてきた歴史があります。そのため、そういう意識で女性たちを見ている男性管理職は今もたくさんいます。また、妻が専業主婦やパート的な働き方をしている男性の多くは、女性は結婚や出産で会社を辞める、いや辞めたほうが家庭にとってもいいに違いない、だから責任のある仕事を任せても後で、突然辞めるかもしれないから面倒なことになるに違いないと考えています。
こういったオールドキャリア的な風土が引きずられたままの状況で、同じ仕事に塩漬けにされ、しかも上司からはサポート的な仕事ばかりさせられていたら、自分自身のキャリアや可能性を考えることなど誰もしないでしょう。仕事は給料をもらうためだと割り切り、モチベーションの低下は進み、「どうせ、私なんて」といった意固地な気持ちすら浮かんでいる女性が増えています。特に、一般職で入社をした女性たちに、そういった状況が広がっていることが問題です。広がっているということは、放置すれば、増えていくということなのです。
では、どうするればいいのか?女性は男性よりも柔軟性、変化適応能力が高いのです。つまり「気づけば変わる」のです。私はここ5年、20代~50代の女性に対して、自分のキャリアを見つめ、未来の働き方・生き方を意識してもらうような研修や講演を数多くこなしてきました。そして、私の出会った女性は、皆、気づいて変わりました。だから、組織の女性が気づくきっかけを作ってください。それには、研修がいいのか、セミナーがいいのか、何が一番いいのかとよく質問をされますが、私は5つのポイントを上げています。
まずは、継続的、複合的な取り組みが重要であるということです。有名な講師を招いて大きな講演を企画しても、女性社員全員に気づいてもらうというのは不可能です。一人ひとりで気づく瞬間というのは違うものなです。だからこそ、講演やセミナーなどを繰り返して、いろいろな気づく瞬間を用意することが重要です。
そして、自分自身と深く向き合う時にこそ、より深い気づきがあります。そのため、集合研修と個人カウンセリングやキャリア相談とを複合して行うなどはとても効果的な方法です。私は実施していた日経BP社の女性リーダー育成セミナーは、受講生全員に対して30分の個人カウンセリングがついているものでした。研修での気づきを、私との30分との対話の中で振り返ったり、そこで浮かび上がってきた自分自身の問題を私に話すことで、葛藤状態から脱出したり、モチベーションがどんどん上がっていったりする姿を私は目の当たりにしています。
また、研修や講演を行う時に、今まで組織がやってきた階層別や職種別、選抜といった概念を取り払うことも重要です。誰もが参加できる、しかも、自分の意思で参加できる形こそが、「気づかせられる」のではなく、「自分で気づく」ということにつながるのです。そういった意味では、異業種交流的な形式も有効です。労働組合などで私が依頼される形式ですが、複数の労働組合が共同で企画し、各組合から6~10人くらいの女性が参加して一緒に研修を受けることで、自分の会社や自分の働き方について客観的に新鮮な目で見ることができるようになります。これまた、大きな気づきを全員が持ち帰っています。
女性内格差は放置すれば広がる傾向にあります。今、ここで広がりを食い止めて、その格差を無くしていくことに真剣に取り組んでほしいと思います。
◎植田寿乃 ダイバーシティ関連セミナー情報
◆2009年12月3日(木)13:30~17:00
〔日本薬学会 長井記念会館(渋谷駅 徒歩8分)〕
心のプロセスと部下のモチベーションをサポート 【人間力リーダー養成講座C】
~心を使った部下とのコミュニケーション能力、表現する力・聴く力を磨く~
http://seminar.jpc-net.jp/detail/lrw/seminar005046.html
◆2010年2月9日(火)10:00~17:00〔日本生産性本部(渋谷駅 徒歩8分)〕
『女性社員チャレンジ研修』 ~自立度チェックと心のプロセス~
イキイキと働きたい女性、仕事を通じて成長したい女性、育児休職中や復職直後でスムースな仕事復帰を望む女性など、企業・団体・労働組合いで働く女性が対象
[日本生産性本部主催]
http://seminar.jpc-net.jp/detail/lrw/seminar005066.html
1960年生まれ。筑波大学芸術専門学群卒。自動車会社の一般職から、(株)ベンチャーリンク、(株)アスキーなどを経て、1991年ANAビジネスクリエイト(株)にてIT事業を立ち上げ、マルチメディア事業部長。1998年IT業界の人材育成を目的に独立し有限会社キュー を設立。2000年より人材開発業界に転身。「モチベーション・リーダーシップ」「経営陣、管理職の人間力アップ」「女性と組織の活性化」「メンター育成」に取り組み、各種オリジナルカリキュラムを開発、年間200日を超える研修・講演を実施。年間1000人のビジネスパーソンへのキャリアコンサルティングも担当。2007年2月より 「女性と組織の活性化研究会」 を主宰し、現在70社を超える企業をネットワークしサポート。著書に『女性活躍推進実践アドバイス』『「女性を活かす」会社の法則』『キャリアセレブになる36の秘訣』「30歳からの幸せなキャリアの見つけ方」等。










