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Column
植田寿乃の「女性リーダーが拓く会社の未来」
植田寿乃
2009.12.02

第9回 男性管理職と女性部下の共有体験が気づきの場

植田寿乃

キャリアコンサルタント/ダイバーシティコンサルタント


男性管理職と女性が参加した研修で
私は日立経営研修所で3年間、日立グループの管理職の人たちに対し、モチベーション・リーダーシップコース(2日間)という研修の講師を務めてきました。このコースは企業の中で管理職として重責を担っていく人の選択研修として位置付けられており、年間6~7回ほど開催されます。参加者は基本的に自薦または上司からの推薦による人たちで、25人限定で行われます。

ほとんどの人は、管理職としての自負を持つと同時に、自分のモチベーションや部下のモチベーションに悩みや課題を抱えて参加しています。通常の階層別研修や、受講者を会社が決める研修とは異なり、受講生はとても積極的です。夜には初日の研修を踏まえながら、各自が抱える悩み・課題について2時間~3時間の熱いディスカッションが続く素敵なコースです。

今回紹介するクラスは、男性24人、そして女性1人で構成されていました。残念ながら、このクラスに女性管理職が参加することはまだありません。研修ではいくつかのグループに分かれてディスカッションしますが、今回は2つのグループが「女性部下」というテーマを選びました。そして、そのディスカッションを踏まえ、各グループがそのテーマに即して翌日発表しました。

女性たちは魚じゃない!
あるグループは、2枚の絵を描いて発表しました、「船の上から魚釣りをしているのが男性管理職、そして海の中で泳いでいる魚が女性たち、1本の釣り糸の下には、魚がたくさんいます。そしてその周りに「昇格」「結婚」「ルイヴィトンのバック」というエサが浮いています。これが1枚目です。自分たちと部下の今の状況を描いたものでした。

そしてグループディスカッションの結果、導かれた結論は
「小さな船を大きな船にして、たくさんの糸をたらし餌をいろいろつけて魚釣りをする」
という2枚目の絵でした。

この絵を描いたのは、女性部下を抱える30代~40代の4人の男性管理職たちです。グループのリーダーは、教室にいる唯一の女性受講生と私に、「僕たちの偏見が出ているので見ないでほしい、聞かないでほしい」と前置きしてのプレゼンテーションを始めましたが、女性たちではなく他のグループの男性たちから激しい突っ込みがありました。

「なんで、女性を魚に描いているんだ?おかしいだろう」
「男性も舟にしているけど、人間は乗っていない。自分も女性も人間じゃないのはなぜだ?」
「女性部下との間に糸とエサというのは変だろう。糸がないと伝えられないのか?」
「糸を増やせば女性部下が動くと思っているのか?変だろう」

そのグループの反論は
「男性部下の気持ちや言動は理解できるけど、女性部下はまるで未知の生きもののようだ」
でしたが、それには、さらに他の男性から意見が出ました。

「だいたい、女性のことを我々男性がわからないなんていうのは嘘だ。だって結婚してれば妻がいる。また、私たち全員、母親から生まれてきている。女性は身近にいる。だから女性のことが全くわからないなんていうのは、おかしいだろう」

発表したグループは、他の男性たちからの厳しい意見や感想に目を白黒させていましたが、私はこの光景を見ながら、ちょっとほっとしました。そうか、ちゃんと女性活躍推進の中で女性部下の育成、関わり方を真剣に考えている男性管理職は増えているのだと感じたからです。確かに、30代から40歳前後の男性管理職の半分くらいは、気づいているのかもしれません。

私だったらダイビングしますね
最後に、クラスで紅一点の女性の受講者にマイクを向けました。

「この絵を見て、頭にくるというよりも、男性管理職ってかわいそうだなと思っちゃいました。本当に女性のことがわからないんですね。私の会社はソフト開発会社ですが、男性と女性の比率は同じくらいです。男性が女性の部下を持ちますし、私も男性の部下を抱えています。私も女性と男性は違うと感じます。でも、それは当り前でしょう。大切なのは信頼関係を作ることだと思います。もし私だったら、2枚目の絵ではダイビングして海に潜りますね。そして直接、魚に触れるでしょう」

1本取られました!という反応がクラス全員の男性たちの顔に表れていました。男性が、いかに女性部下をうまく操縦するかと、頭で論理的に女性を理解し、解決手法を見つけようとしているのに対して、女性が人間として心と心が通じ合う信頼関係を築くことが当たり前だという感受性を意識していることの差が浮き彫りになったのです。

このクラスの受講生は、この絵のディスカッションを通じて多くのことを気づき学びました。この気づきは、きっと彼らが会社に戻った時に、必ず役立つことでしょう。
女性&男性の共有体験こそがポイント!
私は企業から、女性活躍推進のための講演や研修を数多く頼まれていますが、その内容は大きく3つに分かれます。
  1. 社員全員が女性活躍推進に取り組むことを共有する講演
  2. 女性社員向けのキャリア研修、管理職育成研修
  3. 男性管理職向けの意識改革の講演や研修
社員全員が、理念や方向性を確認する講演も重要です。「そうか、うちの会社はそういうことに取り組むんだ。世の中の流れもそうだし、なるほどね」と頭で理解する人は多いでしょう。しかし、自分自身の気付き行動変化につながる人は、実はあまり多くありません。そして女性社員だけ、男性管理職だけの研修ももちろん非常に重要なのですが、これまた、実は自分たち同性だけでの体験の共有と気付きにとどまります。

だからこそ、4番目として男性管理職と女性が一緒に共有体験をするという形の研修や講演を実施すべきでしょう。

男性ばかりの部下を持っていた男性管理職が、初めて女性部下を配属され、されにその育成することを任されれば、戸惑うのが当たり前です。また女性は結婚退職か出産退職が当たり前だったオールドキャリア時代を長く経験している男性管理職が、女性のリーダー登用、管理職への育成に面食らうこともわかります。だからこそ、共有体験が重要なのです。
女性と男性管理職の共有体験はなぜ有効なのか
女性活躍推進、女性のリーダー育成は、女性だけの力ではできません。男性のキーパーソンつまり、男性管理職がカギを握っています。だからこそ、気づきのきっかけを会社が積極的に提供することが必須なのです。私が過去に行って効果的だった講演テーマには以下のようなものがあります。

「勤続10年以上の女性社員のためのキャリア研修」
主な対象は女性ですが、参加者は勤続10年以上の女性社員と社長以下役員全員が一緒に受講

「ダイバーシティ時代の人間力リーダーに求められる7つのリーダーシップ」
主な対象は男性管理職ですが、男性管理職が女性部下を同伴して受講

「女性活躍推進が拓く会社の未来 ~鍵を握るのは男性上司~」
主な対象は男性管理職ですが、男性管理職が女性部下を同伴して受講

「幸せなキャリアと心のエンジン」
主な対象は女性社員ですが、希望する男性管理職と男性が参加

いずれも、女性だけ、男性だけとは違った気付きと共有の場になりました。2~3時間の体験型講演を通して、社内のコミュニケーションが良くなった、風通しがよくなったというレポートを送ってもらいました。是非、皆さんの会社でも実践することをお勧めします。


◎植田寿乃 ダイバーシティ関連セミナー情報
◆2010年2月9日(火)10:00~17:00〔日本生産性本部(渋谷駅 徒歩8分)〕
『女性社員チャレンジ研修』 ~自立度チェックと心のプロセス~
イキイキと働きたい女性、仕事を通じて成長したい女性、育児休職中や復職直後でスムースな仕事復帰を望む女性など、企業・団体・労働組合いで働く女性が対象
[日本生産性本部主催]
http://seminar.jpc-net.jp/detail/lrw/seminar005066.html

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著者紹介:植田寿乃
キャリアコンサルタント/ダイバーシティコンサルタント

1960年生まれ。筑波大学芸術専門学群卒。自動車会社の一般職から、(株)ベンチャーリンク、(株)アスキーなどを経て、1991年ANAビジネスクリエイト(株)にてIT事業を立ち上げ、マルチメディア事業部長。1998年IT業界の人材育成を目的に独立し有限会社キュー を設立。2000年より人材開発業界に転身。「モチベーション・リーダーシップ」「経営陣、管理職の人間力アップ」「女性と組織の活性化」「メンター育成」に取り組み、各種オリジナルカリキュラムを開発、年間200日を超える研修・講演を実施。年間1000人のビジネスパーソンへのキャリアコンサルティングも担当。2007年2月より 「女性と組織の活性化研究会」 を主宰し、現在70社を超える企業をネットワークしサポート。著書に『女性活躍推進実践アドバイス』『「女性を活かす」会社の法則』『キャリアセレブになる36の秘訣』「30歳からの幸せなキャリアの見つけ方」等。

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