「信号突破権取引市場」はいかが、もうインフラはできている
2005年07月28日

  「17時40分発、全日本空輸、大阪伊丹空港行き448便をご利用の方にお願い申し上げます。予約がいっぱいでお乗りになれないお客様がいらっしゃいます。18時55分発の1638便に振り替えていただける方は、お申し出ください」。松山空港で、こんなアナウンスを聞いた。どうも1万円頂けるらしい。

  「1万円か。大阪で家に帰るだけなら振り替えちゃうな」。空港には名物「じゃこ天」の店もある。1時間なんてすぐだ。

  いや、残念でした。これから東京へ行くんでした。しかも戻ってすぐに仕事。

▼渋滞地獄の沙汰もカネ次第

  17時40分から18時55分だから75分を1万円で売り渡すことになる。1分当たり133円か、高いんだか安いんだか。以前、悪友と話していた「信号突破権取引市場」を思い出した。

  これは、急ぐクルマが、お金を払えば自分の前の信号を青(緑だと言う人もいるが)にできる仕組みだ。「仕組みだ」なんて偉そうに言うこともない。酒の席で勝手に盛り上がっただけのことだ。

  渋滞した交差点、前方は赤信号だとする。しばらく待つと、ETC(自動料金収受システム)の端末に「あと15秒、1500円」と表示が出る。「あと15秒待つか、1500円払うか」という意味だ。1秒ごとに価格も下がってくる。「よっしゃ、買いだ」とスイッチを押すと、横の信号がすぐに黄色になる。黄色の時間だけ待てば、自分の前の信号は青になり「突破」できる。

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赤信号を有料で青に変える(写真は、はめ込み合成)

  要素技術は揃っている。GPS(全地球測位システム)で自分の位置と向きが分かれば「目の前の信号」は特定できる。信号管制システムに突破要求を出す。自分が通過したことはGPSである程度分かる。ちょっと精度が足りないが、速度信号も組み合わせれば何とかなるだろう。右折はちょっと難しい。いつまでも自分の正面を青にしておくといつまでも右折できないからだ。右ウインカーを操作することで別の契約にすればよい。支払いはETCを使う。ETCは全国で40%、首都高速道路では50%と、かなり普及してきた。信号機ごとに地上局を作る必要はあるが、ETC地上子は量産すれば安いだろう。今ある料金所の数と、信号の数ではケタが違う。

  信号管制システムは隣り合った信号を連動させ、全体としてスムーズにクルマを流すようにできている。突破された次の信号も、その次の信号も、突破の影響が波及することになる。1回突破し、適当な速度で流していれば、しばらくは青信号ばかりを見て走ることができる。ただし、波及は走る方向などに影響されるので保証はできない。

  突破で起きた乱れは次第に減らしていき、最後には元のリズムに戻す。1日を合計すれば、各方向の信号が青の時間、赤の時間は突破がない場合と変わらないようにする。

▼誰にでも突破したい事情はある

  このやり方、ほかの場面でも生かすことができる。

  永田町界隈を歩いていると妙な光景を見ることがある。信号機の根元にある箱に警官が数人取りついて何やらごそごそやっている。立ち止まって見ていると、青信号のままの道をVIPを運ぶらしき車列が駆け抜ける。なるほど、それで信号機をいじっていたのか。これには大変なコストがかかっているはずだ。VIPの通る先すべての信号に警官が必要だからだ。

  緊急車が通る側を青にするという要求もある。緊急車は赤で進んでもよいのだが、渋滞にはまってほかのクルマが止まってしまえば進めない。また、横が青信号なので、クルマが突っ込んでくる危険性もある。だから青にしたい。

  ほかにも路面電車やバスの通る側を青にするなど、多くの要求が信号管制システムには来ている。今はそのたびに仕組みを作って対応しているが、突破権取引はこうした要求を一括して片づけることができる。

▼値付けはどうするか

  盛り上がった時は酔っていたので「交差する道路にいるクルマがもっと高い価格を提示したら負けるようにして、ネットオークションにすれば大変な収益になる」という話になった。後で冷静に考えたら、それはさすがに危ないことに気がついた。オークションでは運転に集中できない。運転者の操作は1回だけ、しかもクルマが動いていない時に限るのが順当だろう。

  ただし、緊急車は「助手席の人間がその操作に専念する」という建前で走行中でも操作できるようにすればよい。人命のためだ。

  オークションをしないのなら、定価が必要になる。「15秒、1500円」に何の根拠もないのだが、これで1秒100円。「カネのある人がイライラした勢いで『エイヤッ』と出す」ことはあり得る数字だろう。松山空港の1分133円(1秒2円)よりはかなり高い。

  収益はETCなどにかかった費用を除いて全部自動車税と同じ原資に回せばよい。自動車税は都道府県税だから、道路管理者が国だったり市だったりするとややこしいが、そのために第3セクターを作って配分するくらいのことはできるだろう。オークションを考えていた時は「自動車税をなくせる」くらいの勢いで皮算用したのだが、「1秒100円」では「減らせる」程度か。

  渋滞地獄の沙汰をカネで買うことになる。「金持ち優遇」という感情的反対は起こるだろう。しかし、時給の高い人には渋滞なんかに引っかかっていないで、どんどん仕事をしてもらった方がよい。それがみんなのためになるのだから。待ってくれた人には自動車税が減るという形でお礼ができる。悪い取引ではない。

  1つ心配なことがある。これで味をしめた道路管理者が「収益が減る」と交差点の立体化をためらうことだ。いや失礼、そんなにココロザシ低くないですよね。

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トラックバック時刻: 2005年07月28日 09:24
» 信号機トラブル? from 社会人2年生。日々の戦略と想うこと・・・。
「信号機」  もしこうなったら・・・。(笑)  そう思うと怖い気もするけれど経済は潤うのだろうか?  微妙だけれども実現する?  そんな... [続きを読む]



コメント
投稿者 青山稔弘 : 2005年07月28日 09:05

効果は薄いでしょう。また、混乱すると思います。交差する道路側からも同じ要求が出て、結局信号が変わらないのと同じ時なると思います。また、常に通っている交差点の赤、青の時間は感覚的にほぼわかっていますから、見込み運転している運転者の感覚が変わり、事故が増えるのではないでしょうか。

投稿者 kaneko : 2005年07月28日 09:33

アイデアはとても面白いもので、商売として成り立つ予感はありますが、仕事に使用した場合の会社が経費として払う・払わないの話では混乱するかもしれません。

使用することに関しての正当性が会社側でも見れれば問題ないでしょうが。

個人消費より法人消費の方が恐らく多くなることを考えると、仕組みを考えるときにそこの部分も考慮すべきでしょう。

繰り返しになりますが、アイデアはとても有効で、消費者(運転者?)の心理を突いています。

深く考えるとそもそも渋滞をなんとかせい、というのは政府の課題ではないかという事にもなるので、何故金を払わなければいけないのかという風にも考えられる気がします。

投稿者 則巻千兵衛 : 2005年07月28日 09:35

信号は車を1台1台制御するほどには緻密にできていません。
ということは、信号を突破する1台のまわりの何台かは漁夫の利を得ることになります。
また、信号待ちで先頭にいるとは限らないので突破しようとしたとき自分の前にいる何台かに同じ恩恵を与えることになります。
となると、よほど安価でなければ突破権は売れないんじゃないかと思います。
待った方の自動車税を減らすとして、どれだけの車が待ったと判定するのか、また待とうと思った車と、どうでもいいと思った車に格差も必要でしょう。
とすると、積極的に(税金を節約するために)待とうとする車の隣で急いでいる車が信号を突破したために自分の意志が無効にされたなどとトラブルになるような気もします。
結局、信号機で車1台1台を制御できないと突破権市場は難しいんじゃないでしょうか?
もう一つ、渋滞回避のためには割り込み権(追い越し権)とそれを実行する手段がなければ待とうと思った車の後ろの車はいつまでたっても渋滞の中ということになりかねないと思います。
結局、交通当局の「止まっている車は事故を起こさない」という考え方が改まらない限り、信号待ちのイライラも渋滞もなくならないということじゃないかと思います。
ちなみに、緊急車両の前方信号を青にする仕組みはもう実用化しているんじゃありませんか?

投稿者 岡田英信 : 2005年07月28日 09:41

真剣に議論しても仕方ないですが、2、3気になる点点を列記しますと、
 ・突破する車の後ろについていけば、タダで通過で  きる。ずうっーと付いていければラッキー。
  (続いた車にも払わせるとすれば、2台続けば、   負担は500円/車、しかしETCを搭載していない車  もある)
 ・車線が複数の場合は、もっと後続車や併走車が多  くなるため、単価は下がり(渋滞車線ほど単価は  安くなり)案外、一度、突破するといつまで経っ  ても、交差側の車線は、停止状態となり、不満が  鬱積する。
などがあり、立体交差が作られない心配は、あまりなさそうに思いますが・・。

投稿者 石渡英五 : 2005年07月28日 10:04

日本でも飛行機の座席を譲るシステムが出てきたのですか。アメリカ系の航空会社では、これは極めて日常的で
小生もかつて頻繁に海外と往復していた時期に5回ほど機内アナウンスで聞いたことがあります。実は一度だけあまりの好条件につられて、席を譲ったことがあります。航空会社名は伏せますが、米系大手のハワイ行き便でした。真夏の最盛期ですから、かなり高額で買ったビジネスクラスのディスカウントでしたが、翌日のファーストクラスに切り替えるし、本日のホテル代金として5万円という条件でした。これは航空会社のオーバーブッキングが原因ですから、堂々と翌日の飛行機に乗せてもらいました。おまけにこの翌日の飛行機が、整備不良で2時間近く遅れたために
お詫びとして2万マイルのマイレージ加算でした。時にはこういう余禄もいいですね。

投稿者 滝沢力 : 2005年07月28日 10:58

時間をお金で買うアイデアはとても面白く読ませていただきました。その一方で、有料道路は、本来早く目的地に着く代償としてお金を支払っています。道路工事や渋滞で一般道より時間がかかっても料金を請求されるのは納得ゆきません。時間をお金で買う発想と同様に、時間内に到着できない有料道路こそ、逆に使用者に返金するシステムにして欲しいと思います。

投稿者 やまはら : 2005年07月28日 11:09

米国の「ナッシュ・ブリッジス」という刑事ドラマで、主人公は目の前の信号を青にするリモコン装置を持ってました。
もう既に実用化されているのでしょうね。

投稿者 小林 : 2005年07月28日 11:20

 現実的に考えると詰まらない話が山盛りに出てくることになるので夢のままの方がいいと思います(笑)けど、発想的には面白いですね。

 「信号突破権」以外に、「首都高オークション」も考えてほしいです。
 渋滞しない程度に、流入車両数上限を設けて、その枠をオークション形式で買い落とす。
 朝夕なんかは1台5000円あたりまで跳ね上がるかもしれないけど、5000円払えば渋滞のない首都高が走れるというもの。

投稿者 榎本祥明 : 2005年07月28日 12:32

面白いアイデアと思います。官製による強制力と金持ちの金力が、信号機を自在に使える研究をするよりは、いかに渋滞しないようにする交通信号機の青時間の長さや、隣接する信号機の連動、歩行者と自動車信号の分離など、検討することがまだまだ沢山あると思います。

投稿者 : 2005年07月28日 13:02

なるほど。渋滞時の路肩走行権もおもしろいかもしませんね。

投稿者 tkob : 2005年07月28日 13:56

空想・技術・遊び心・書き物的には、面色い
アイディアと思い、感心します。
が、現実的には論外です。
札束で社会ルールを曲げる。障害者・子ども・非裕
福層・ギャンブルに興味のない者など、比較的弱者
を中心の視点で考えると問題が大きいです。
弱者を救済し次世代に住みよい社会でバトンタッチ
する気持ちが薄いことが嘆かわしい。心が薄い。
最近よく出くわす、利己心理と考えるのは私だけで
しょうか。

投稿者 甘利 : 2005年07月28日 14:47

大変面白い考え方だと思います。
実はちょうど今朝、「納税者の投票」という仕組みを考えたところでした。納税する際にどのような政策にお金を使ってほしいかということを意思表明するのです。道路建設に使ってほしいのか、宇宙開発に使ってほしいのか、福祉充実に使ってほしいのか。使い方を決めるのは国会議員(実態は上級国家公務員かもしれないが)というのは国民一人一人にとってはあまりにあいまいな意思表示しかできない。こんなことができる要素技術はもう出来上がっているでしょうから、あとはやるだけです。世界に先駆けた納税システムを構築したいものです。

投稿者 Satou : 2005年07月29日 00:38

アイデアとしては、面白い発想とおもいます。
でも、そもそもなぜ信号があるかを考えると、
交通を円滑にするためかとおもいます。
信号突破で、本来の役目が失われないかが疑問です。

投稿者 funbeno : 2005年07月29日 09:53

話しとしてはとても面白いです、交通機関でなく別の所で生かせないかなぁと考えます。
内容は、別の方が仰っているとおりで、新規な物は何もないのですが、当方の地元ではバス(神奈中)が近づくと信号が青になるシステムが作動している?と言う話しですが、渋滞してそもそもバスが交差点に入れないので意味がありません。
これも突破システムも同じようなのじゃないかしら?

投稿者 わたなべ : 2005年07月31日 12:04

交通量に合わせた信号機制御に関して、信号機の台数がやたらと多い割りに日本の交通行政はかなり遅れている。たとえば、米国では片田舎でも際されている交通量感応時間制御など、この問題以前にもっと取り入れるべきである。


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