日経デザイン 編集長ブログ デザインの雫
2010/03/07
100307 TETSUSONを知っていますか?
昨日、雨の中、横浜のギャラリースペース「BANKART」に出かけた。TETSUSONの審査会に参加するためだ。
TETSUSONは、デザインを学ぶ全国の大学生の合同卒業制作展として始まった。卒展(そつてん)をひっくり返して「てつそん(TETSUSON)」というわけだ。今や、韓国の大学からの参加も迎え入れ、国際色を増している。指導教官が付いているわけではなく、学生たちの自主運営で続けられているのだから驚く。
学生たちは今年から、単に展示を行うだけでなく、公開審査会を開き、議論とコミュニケーションを活発に行おうと考えた。それならばと、審査員を快く引き受けた。
会場に足を踏み入れ、アートとデザインが混然と展示されていることに最初は多少戸惑ったが、アートとデザインの境界を設けず、自由な表現を試みたい学生たちの熱意が次第に伝わってきた。エディトリアルデザインにイノベーションを持ち込もうと試みた「変化する数え方」に、審査員賞を贈った。実に楽しく、力のあるデザインだった。
デザイン系の学生はいいなといつも思う。私自身は経済学を大学で学んだ。ゼミの修了論文を読んでくれたのは、おそらく担当教官だけだったろう。しかし、デザイン系の学生は、作品を通して自らの考えや感性を多くの人々に伝える機会に恵まれている。うらやましいと思う他部門の大学生は少なくないだろう。そんなチャンスを大いに生かそうと企画されたイベントだった。「行動」することもデザインなのだと、学生に教えられた気がした。
2010/02/16
100216 アンビエンテ最終日
世界最大の生活雑貨見本市「ambiente(アンビエンテ)」も、今日で5日目、最終日だ。雪の影響で初日と2日目の来場者数は少ない印象だったが、3日目にはアンビエンテらしい賑わいが戻ってきた。
日本ブース「Connect to Japan Design」は、普及価格帯でハイデザインのブランドを集めたフロア「loft」に出展した。Loftは今年から11号館に移動し、集客上少し不利に思えたが、日がたつにつれて客足が増えてきた。
特別にステージを設け、常にデザイナーやメーカーの経営者がプレゼンテーションを行う日本ブースには、多くに外国人バイヤーが足を止めてくれた。まだ、欧州に顧客を持たないメーカーやデザイナーにとって、新規開拓のチャンスがあったに違いない。
少し不思議に思えたが、外国メーカーのブースを見ても、エコロジーやユーザビリティーを切り口にした製品やデザインが、ほとんど見当たらない。その点を訴求した日本メーカーやデザイナーは、独自性を打ち出せ、微笑を持って迎えられた。日本のデザインやモノ作りの思想が伝わる見本市でもあった。
2010/02/10
100210 明日、独アンビエンテに出発
仏メゾン&オブジェが終わったと思えば、もう、独アンビエンテだ。世界最大規模の生活雑貨の見本市で、バイヤーの買い付け予算も最大といわれるだけに、出展者は真剣だ。今年も多くの日本企業やデザイナーが、出店する予定。
今回の出張には、取材のほか、経済産業省の「ソフトパワー海外派遣事業」のエグゼクティブプロデューサーという仕事も伴う。選抜した日本のデザイナーを、世界のメーカーに売り込もうという企画で、昨年11月に中国・上海で実施したプログラムに倣う。
しかし、デザインの本場、欧州での事業だけに、アピール方法やプレゼンテーションのプログラム作りには、一層力を入れた。初日にプレスカンファレンスを企画するとともに、多くの参加デザイナーがブースで毎日、自己PRを行う。私も3日間「日本のデザイン力」についてのプレゼンテーションを行う予定。
現地からも、このブログでリポートします。16日までは会場のフランクフルトメッセにいるので、見かけた人は声をかけてください。これが終わると、次はミラノサローネだ。
2010/02/03
100203 低炭素社会に向けたデザイナーの役割
一昨日の2月1日、環境省とデザインアソシエーションが共済したコンペ「ローカーボン ライフデザインアワード2009」の発表会と、シンポジウムに出かけた。低炭素型ライフスタイルを提案する新たな住空間やプロダクトを求めるコンペで、大勢の報道陣が駆け付けた。鳩山首相が宣言した「2020年までに二酸化炭素などの排出量を25%削減する」という宣言のインパクトは、今も薄れていない。
グランプリを獲得した「ATATA−KAYA」は、受賞にふさわしい提案だった。アルミ製の三角錐のような構造体で空間を構成し、構造体の内部で竹チップを発酵させるアイデアで、電力などのエネルギーを使用せずに空間を暖められる。同時に、日本中で余って焼却処分されている竹を有効活用できる点でも、魅力的な提案だ。デザインと技術の見事な融合が、不透明な低炭素社会に光明をもたらした。
未来の低炭素社会が、今より極端に不便だったり、窮屈な暮らしを強いられたり、そんな社会ではいけない。また、そのために、経済成長を止めてもならず、むしろ新産業を生むロードマップを描かなければならない。「ATATA−KAYA」がすぐに製品化されることはないかもしれないが、新しい時代へのベクトルをデザインとして示した意味は大きい。
発表会後のシンポジウムでは、司会進行を務めた。壇上には、デザイン界から浅葉克己さんと隈研吾さんが上がった。浅葉さんは直筆で「転換期」と書いた半紙を掲げ、デザイナーがさまざまな運動のリーダーになるよう鼓舞した。隈さんは、日本のライフスタイルの優れた面を発掘、再評価しながら、世界に向けて発信するようメッセージを送った。
低炭素社会実現に向けて、デザイナーはどういった役割を果たすべきか。真剣に議論しなければならない。おそらく、表現者として生きていくだけではダメだろう。運動家、説得者、案内役…、さまざまな役割を担っていくべきに違いない。