知的財産管理技能検定3級 完全対策講座
第13回(2012年11月11日)試験への法改正の影響について
みなさん、こんにちは。次回(第13回)試験は11月11日に予定されていますが、法令基準日は2012年5月1日とされているので、昨年公布され、本年4月1日より施行されている特許法等の一部改正が出題対象に含まれることになります。この改正は実務上重要な事項をいくつか含んでいるのですが、本書(改訂版)について変更が必要になるのは、通常実施権の登録に関する以下の(1)~(3)の3ヶ所の記述です。
(1) 52p.8-10行目 「ただし、通常実施権を登録すると、その後に特許権を取得した者にも対抗すること(新たな特許権者に通常実施権の効力を主張すること)が可能になります(99条1項)。」
⇒ 今回の改正で、通常実施権を登録しなくても、その後に特許権を取得した者にも対抗できることになりました(当然対抗制度)。様々な技術分野で多数の特許権のクロスライセンスが行われていますが、それらの特許権が譲渡された場合に備えて全てを登録するというのは現実的ではなく、こうした実情に合わせて法改正が行われたものです。そのため、この部分の説明は、「また、通常実施権は登録をしなくても、その後に特許権を取得した者にも対抗すること(新たな特許権者に通常実施権の効力を主張すること)が可能とされています(99条1項)。」に変更してください。
尚、実用新案法、意匠法でも同様の改正が行われていますが、商標法のみは対象外で、従来と同様に通常使用権は登録が対抗要件とされています(∵商標権は特許権のようにクロスライセンスが多数存在しているような状況にはないため)。
(2) 66p.問題8の解説[ウ]
正解に変更はありませんが、ウの選択肢についての説明は、「通常実施権の設定は、登録を効力発生の要件とするものではありません。」となります。
(3) 74p.問題15の解説
正解に変更はありませんが、解説部分の6-7行目の「…、通常実施権の登録は特許法に対抗要件としての効果が規定されている(99条1項)ものの、登録しなければ効力が生じないというものではなく、…」は、「…、通常実施権は登録しなければ効力が生じないというものではなく、…」に変更してください。
この他に、今回の改正では、新規性喪失の例外に関する規定についても大きな改正が行われています。新規性喪失の例外について、本書では41p.脚注に記しているのみで、その範囲での変更はありませんが、以前のエントリ「第3回試験/学科・問24 と国内優先権制度」では、新規性喪失の例外規定について、以下のように説明しています。
「イは、新規性喪失の例外(特許法30条)について問う選択肢で、刊行物や学会での発表など一定の要件を満たす場合には、発明の公表後に出願しても例外的に新規性を喪失していないものとして扱われる規定が設けられています。この規定の適用を受けるためには、特許出願と同時にその旨を記載した書面を提出し、出願日から30日以内にこの規定の適用を受けられることの証明書類を提出することが必要なので、この選択肢は適切です。新規性喪失の例外(本書39p.脚注)については、余裕があれば、以上の内容を覚えておくとよいと思います。」
このうち、今回改正の対象となっているのは「刊行物や学会での発表など一定の要件を満たす場合」の部分で、従来は新規性喪失の例外が学会発表などに制限されていたところを、今回の改正では「特許を受ける権利を有する者の行為に起因して」と改正され、学会発表等のみでなく幅広いケースが対象に含まれることになりました。尚、上記の書面提出等の他に、「新規性を失った日から6ヵ月以内に出願しなければならない」ことも要件とされており、過去に出題対象となったこともあるので、あわせて覚えておくとよいでしょう。